.■5月例会 講演レポート | - .2011/6/27
- .━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011/6/27━━━
■5月例会 講演レポート
テーマ 「心痛む百貨店泥沼戦争と 心和らぐ音声ガイドのお話」
講師 中部百貨店協会 事務局長 大西隆信 氏
NAGOYA KEIEI KENKYUKAI BUSINESS & CULTURE ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 開催日 平成23年5月25日(水) 会場 料亭 蔦茂
■小売業50年の歴史の振り返りと、 これからの百貨店のあり方
この50年の間に、百貨店や小売業の姿が大きく変化しました。
1960年代は百貨店、 1970年代から1990年代までの30年間は、 スーパーマーケットの時代です。
スーパーマーケットは、対面販売からセルフ販売へ、 大量仕入れによる激安価格ということで、 当時の消費者に新鮮な驚きを与えました。
1980年にはダイエーが 小売業で初めて年間売上げ1兆円企業になりました。 その頃がピークでした。
21世紀になって、 日本人の生活習慣を変えたともいわれる コンビニエンスストアがでてきました。
最大のセールスポイントは24時間年中無休営業。
消費者にあらゆる生活の便利さを提供して、 今や国内で4万6千店舗、 年間7兆円強と百貨店の売上を抜き去る力をつけました。
百貨店は1991年には9兆7130億という 史上最高の売上げを記録して以来、下がり始めています。
店舗数も1990年には350店舗ありましたが、 今では約250店舗となっています。
1960年のときは、 スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストアもなかった。
それが、どんどんと小売業界は多様化が進み、 百貨店は、百貨店でしか買えない商品分野がどんどんと 少なくなってきた。
言わば百貨店の守備範囲がどんどん狭くなったのです。
そういう中、最近、百貨店は、 高級ブランドを少しでも多く確保しようという戦いに 力を注いだものの、
結果的には、どの百貨店もほとんど同じブランドが 並ぶようになってしまいました。
一旦、百貨店の中に入ってしまえば、 どこの百貨店でも同じ風景で、 全体として高額商品ばかりの品揃えとなってしまったのです。
したがって、 バブルが弾け、景気が下がる一方で、 さらにリーマンショックの後の世界的大不況となって 消費者の節約志向が徹底すると、まずは高額品が敬遠されます。
消費者にとって、 百貨店に行く必要性が少なくなってしまう。 これが今、厳しい経営状態が続いている背景といえます。
●これほど百貨店にアゲインストの風が強く当たっている にも拘らず、 目一杯の店舗面積の拡大をしている百貨店や、 新しい巨大デパートがオープンしている地区があるのです。
それが大阪地区と福岡地区なのです。
大阪地区ではJR大阪駅北口に 「JR三越伊勢丹」が5万uで新規オープン。
それに対抗して南口の「梅田大丸」が1.5倍の64,000uに増床。 さらに「阪急本店」は全館を建替えて12年に84,000平米と 超巨大デパートに。
さらには心斎橋では「大丸」が 「そごう」(4万u)を買収して78,000uに、 なんば「高島屋」も今春大幅増床して78,000uで改装オープン。
それで終わらず「阿倍野近鉄本店」では 14年になんと10万uという日本一の超巨大デパートに変身。 まさに大阪は百貨店の供給オーバーの泥沼戦争となっています。
同じく、福岡ではJR博多駅に、 「博多阪急」が新規オープンし、 229店舗の専門店街、東急ハンズ、家電専門店、 ホームセンターなどの店舗が周りに集結しました。
JR博多駅に行けば必要なものが全て揃うことになるわけです。 今までの繁華街天神地区の3百貨店が大きな影響を受けるでしょう。 まさに両地区とも百貨店のつぶしあいの様相なのです。
小売業50年の歴史を振り返ってみますと、 いずれもその時代、その時代の日本の政治経済と 景気や社会の動きを背景に最も消費者の要望に応えた業界が 王者となってきたといえます。
これからも、常に消費者の要望に応え、対応するために、 自らが変革をし、新しい業態や販売手法を開発する小売業者が 生き残るといえます。
■「音声ガイド」との出会いと、ボランティア活動
昨年の12月、視覚障害者の映画鑑賞のお手伝いをする 音声ガイドというボランティア活動があることを知りました。
「音声ガイド」というのは、映像は見えないものの、 会話や音が聴こえる視覚障害者に対して 映画のその場面ごとのスクリーンの風景や、 人の動きなどを的確に解説し、 視覚障害者が十分イメージできるようにすることです。
私は幸い映画が大好きですから、その音声ガイドを通じて、 障害者の方のお手伝いができるのではないかということで、 1年間の研修を終えて今年から本格的に活動を開始しました。
研修では、観客や、障害者の方に 音声ガイドが聴き取りやすいように、 発声や滑舌練習、朗読などの訓練を徹底的にしました。
また実際の音声ガイドの台本作りの指導もうけました。 これはDVDを繰り返し聴くなどして、 通常の映画の台本を作成した上で、 そこに簡潔、適切、的確な音声ガイドの文章を入れ込む作業 なのですが非常に長時間かかります。
最終的には、 視覚障害者の方に実際に聴いていただいて、 文章の修正をしていきます。 1冊の台本には多くのボランティアの汗がしみこんでいます。
●日本にはどのくらい障害者の方がいるのかというと、 身体障害者の方が約350万人。 知的障害者の方が約55万人。 精神障害者の方が約300万人。 合計で約700万人となります。 但し身体障害者の内聴覚言語障害者の登録数は36万人ですが、 加齢や病気で聴覚に障害がある人を含めると、 実際は600万人以上といわれています。
それを足すと、 日本の人口1億2700万人の約10%は、 障害者の方になるといえます。
なお視覚障害者は全国に31万人いますが、 驚くことにその8割が中途失明者なのです。 しかもその殆どが糖尿病性網膜症が原因なのです。
●障害者や高齢者に対するとき、 つい相手の方を弱者だと見て、 「やってあげている」という気持ちがでてしまいがちですが、 私にできることがあれば「させていただく」 という気持ちが大切です。
障害者は障害の部分を除けば、私たち健常者と同じなのです。 私たちは相手の方に敬意を持って接する心構えが大切。 高齢者の方には人生の先輩として接する事が必要です。
視覚障害者の気分を害する言葉は、 「介助」という言葉です
自分が何もできないことをいわれているように 聞こえてしまうからです。
また、案内はさりげなく、自然に行うようにします。 よく、周囲の人にも聞こえるような大きな声で 案内をする人がいます。
視覚障害者は目が不自由なだけで、 耳は不自由ではありません。 普通の声で自然にやるのが基本です。
●身体障害者補助犬とは、 盲導犬、聴導犬、介助犬の3種類の犬の総称です。
盲導犬は、 障害物、曲がり角、段差の存在を知らせ、 視覚障害者の手助けをします。
盲導犬の多くは、ラブラドール・レトリバー種で、 全国に約1000頭います。
盲導犬を1頭訓練するのに約500万円の費用がかかります。 盲導犬を待っておられる視覚障害者は全国で約8000人います。
聴導犬は、 聴覚障害者の耳がわりとなって、 必要な音を教えて穏便に誘導する犬です。
室内ではFAX、インターフォン、電話、やかんの沸騰、 赤ん坊の泣き声などを聞き、その場所まで誘導します。
屋外では、クラクションや自転車の呼び鈴などにも反応し、 危険を回避します。 聴導犬は、全国で13頭です。
介助犬は、 手や足に障害がある人の日常生活をサポートするよう 訓練された犬です。
落とした物を拾って渡す、 手の届かない物を持ってくる、 ドアの開閉、冷蔵庫や引き出しの中から物を取り出す、 スイッチ操作など、いろんな介助をやります。
使用者のニーズに適応するため、 訓練もオーダーメイド制をとっています。 そこが介助犬の大きな特徴です。 全国で39頭が実働しています。
身体障害者補助犬法 第九条には、 施設における身体障害者補助犬を同伴することを 拒んではならないとされています。
普通のペットとの区別をするために、 盲導犬はハーネス、 聴導犬、介護犬は首輪に補助犬の表示をつけています。
使用者本人には、認定証の携帯が義務付けられている他、 身体障害者手帳を持参することになっています。
このような法律がありますので、 受け入れ態勢の徹底を図っていただきたいと思っています。
-------------------------------------------------------
|
|