.3月例会 | - 2013/03/15
- .3月例会
●日時 平成25年3月12日(火)
●テーマ 「介助犬と障がい者の自立 〜医師の立場から普及をめざして〜」
●講 師 日本介助犬協会 事務局長 高柳 友子氏
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3月例会 講演レポート
テーマ「介助犬と障がい者の自立 〜医師の立場から普及をめざして〜」
講師 日本介助犬協会 事務局長 高柳 友子氏
NAGOYA KEIEI KENKYUKAI BUSINESS & CULTURE ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 開催日 平成25年3月12日(火) 会場 料亭 蔦茂
■「身体障害者補助犬法」
今、介助犬を必要としている方は、 たくさんいらっしゃいます。
ただ、 ほとんどの方が盲導犬は知っていても、 介助犬という存在を知らないというのが 日本の現状だと思います。
介助犬というのが、 法律上のきちんとした定義になっています。
「身体障害者補助犬法」という法律です。
いろんな講演会に呼んでいただきますが、 そういう法律があることを知っている方は あまりいません。
ぜひその法律の中身も知っておいていただきたい と思います。
皆さんもご存知のように、 身体障がい者の補助犬としては、 視覚障がい者のための盲導犬が一番歴史が古いです。
盲導犬に関しては、 昭和35年から道路交通法で法律的な位置づけが ありました。
盲導犬はペットではありませんということで 店舗、施設、ホテル、飲食店、 いろんなところに 各省庁から通知・通達が出されたのです。
ところが、介助犬には法律がない。 盲導犬も入れた法律作りが必要だということに なりました。
そこで聴導犬が入り、この3つを総称して、 身体障害者補助犬と称し、
障がい者の社会参加を促進することを明確にしよう ということになりました。
この法律は、 「社会的な受け入れ義務を課す」というのが 一番の目的です。
この法律を作るにあたって、 各国の法律を全部、見直しました。
先進諸国では、 盲導犬はずいぶんと遅く始まった韓国にも きちんとした法律がありました。
障害者差別禁止法です。
その法律が日本にはなかったので、 「身体障害者補助犬法(補助犬法)」が 最初の障害者差別禁止法になりました。
盲導犬、介助犬、聴導犬を理由に 障がい者の社会参加を拒んではならない、 という法律です。
ただ、 日本ほど、清潔意識が高い国はありません。 こんなに抗菌グッズがある国はありません。
犬は汚いという感覚を持つ方が多いようで、 なかなか受け入れる意識に変わることは難しい環境です。
そこで、補助犬に認定制度を設け、
使用者がきちんと衛生管理も行動管理も全責任を持って 迷惑かけないということを約束事にしましょう
ということで「認定制度」というのが 補助犬法には定められています。
認定試験に合格しなければ、 盲導犬、介助犬、聴導犬という表示をしてはいけない。 認定書も貸与されないし、社会参加は保障されない。
それだけのハードルを越えて社会参加しているんだ ということを知っていただきたいと思います。
盲導犬は視覚障がい者30万人に対して 1000頭ちょっとが、60年の歴史の中で実働しています。
聴導犬、介助犬は10年しか歴史がありません。 聴導犬は全国で、まだ42頭。
介助犬は対象となる障がい者176万人に対して62頭です。
■障がい者の心の支え「介助犬」
介助犬の主な仕事としては、持ってくることです。 移動の支援などもします。
車椅子が溝にはまったとか、 デコボコ道に足を取られて動けないときに、 補助的に引っ張ることもします。
一番、障がい者にとってニーズが高いのは、 電話の子機や携帯電話を手元に持ってくるということです。
障がいを持つということが、 危険と隣り合わせるということに他なりません。
例えば、 ちょっとした油断で、 車椅子から車への乗り移りを失敗してしまうと 緊急事態です。
誰にも見つけてもらえなかったら・・・ という怖い思いをする。
家族は家族で心配をする。
携帯さえ持ってきてくれたら、 誰かに助けを呼ぶことができます。
誰かに連絡がつくと思えば頑張れる。 そういう安心感は、とても大切なことなのです。
障がい者によっては、 筋力が弱くて立ち上がれない人がいれば、 関節の動きが悪い人もいる。
障がいによって犬の使い方が違ってきます。
そういう意味で、 私たちは、リハビリテーション専門職と 密接に連絡を取りながら、
個々のニーズに合わせて、訓練をしないといけない というのが介助犬の大きな特徴です。
全ての人が介助犬ユーザーになれるわけではありません。 認定を合格しなければいけない。
健康、衛生、行動管理に全責任をもって、 社会参加をするというだけの能力が本人にないといけない。
犬もまた、 全ての犬が介助犬になるわけじゃありません。
当会が一番大事にしていることは、 介助犬に向かない犬を介助犬にしないということです。
皆さんの家にいる犬は留守番をしています。 介助犬たちは、留守番をしない。
24時間、365日、 ずっと大好きな飼い主を一緒にいられる幸せな犬です。
でも、そのかわり、 ユーザーがディズニーランドなどに行ったりすると、 犬にとっては最悪です。
花火は上がるし、人々は興奮している。 人混みもある。
そういう場所には行きたくない、 というような犬では、 介助犬になるとストレスがかかり過ぎてしまいます。
気持ちの切り替えが上手なことが、 非常に大切な適性です。
ときどき、 介助を犬に手伝わせるなんてどういうこと? 家族は、なにをしているの? というお叱りをうけることがあります。
ただ、当事者は、 大切な家族だからこそ、 自分のことを忘れて遊べるような時間を持って欲しい と思っています。
家族から介助をうけることはありがたいけれど、 申し訳ないと思っている。
当事者は「人に頼んだことは、自分にできない」 という認識をします。
でも「介助犬に指示したことは、自分でした」 と思える。
だから介助犬ユーザーになってから、 皆、どんどん元気になって行くのだと思います。
現状では、 全国で半分の都道府県には介助犬が0(ゼロ) という状況です。
犬種としては 大型犬でないとできない介助作業が多いので、 ラブラドールレトリバー、ゴールデンリトリバー などが多いです。
最近は、補助犬法を知っている上での課題もあります。
ホテルで、こちらのお部屋へどうぞと ユーザーが案内される。
レストランなどに行くと、こちらの席へと案内される。
どんな席かというと、 すぐ入り口に近くのいつでも出ていける席。 とても失礼なことです。
介助犬ユーザーが、 車椅子だから、向こうの広い席の方を使わせて欲しい と言っても、
いやいや、申し訳ありませんがこちらの席で と言われてしまう。
正しい受け入れ方ではない ということをぜひ知っていただきたいと思います。
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